Track Review: THA BLUE HERB / STILL RAINING, STILL WINNING

Posted on 10/17/2012

THA BLUE HERB / STILL RAINING, STILL WINNING

どうやら甘えすぎていたらしい。THA BLUE HERBにとって沈黙の2011年が明け、何を見せてくれるのか。無情と理不尽が横行し、そして風化していく暗闇の日本をどう照らしてくれるのか。これまでTHA BLUE HERBはその思想性から、ファンたちを含め宗教的と揶揄されることも少なくなかった。それは同時に、彼らの音楽に救われた者が多くいることを表しているだろう。しかし、今回ばかりは甘かった。この甘えこそが宗教的だ。2012年、彼らがこの暗雲立ち込める日本を変えてくれるはずだ、と。

1stアルバム『Stilling, Still Dreaming』は、同業者に殴り込みをかけた、いわば”NO”を突き付けるための挑戦状だった。その後、リスナーが付くことでメッセージを送る対象が変わってくる。そして3rdアルバム『Life Story』ではもっとポジティブで開かれた、普遍的なメッセージを歌うようになった。そのように変化してきたからこそ好き嫌いや賛否両論が生まれるわけだが、そんなポジティブな普遍性を持った3rdアルバムから、次は何を見せてくれるのかという期待を持たずにはいられなかった。特に日本人にとって試練の2011年を終えた今だからこそだ。そしてTHA BLUE HERB第4章の幕開け、2011年の沈黙を打ち破る楽曲となったのが、この「Still Raining, Still Winning」になる。これまで彼らは、「時代は変わるpt.2・3」で政治的なリリックを書いたり、「未来世紀日本」「路上」などでファンタジーの世界を展開していたこともある。何かそんなスケール感のある、こんな状況を変えてくれる新しい音楽を聴かせてくれるのではないかという、宗教じみた浅はかな期待だったのだろう。しかし「Still Raining, Still Winning」は、3rdのポジティブで普遍的なメッセージ性を持つ、変わらないTHA BLUE HERBがいた。おまえが自分の足で立たなければ道は開けない。音楽は世界を変えるが、世界を変えるのは人間一人一人だ。こんな時だからこそ、「絆」とかいう抽象的なことや、現実を見ない政治的な内容を歌うのではなく、一人一人が意識を持って立ちあがらなければならないということを伝えたい。こんな時だからこそ、そんなシンプルな思いしかないんだ。そんなことを痛いほど分からせる曲なのだ。

ラップのスタイルとしては3rdと同じように、1stや2ndに見られたライミングは陰を潜めている。そして、リリックの内容は3rdよりも更に分かりやすくなっている。初期のように難解で専門的な言葉はない。同時にラップのテンションとしては、自身もインタビューで認める通り1stに近い熱を持っている。ただ、そのラップがトラックとシンクロしていないようにも聴こえる。それよりも熱く強く語りかけることを重視したのかもしれないし、もはやラップ的、ヒップホップ的にどうとか、音楽的にかっこいいかどうかを第一にしているのではないのかもしれない。

Phase 4を迎えたTHA BLUE HERBとしても、今の日本としても再スタートを切るんだというメッセージを分かりやすく伝え鼓舞し、2011年を経験した日本人に向ける、圧倒的に開かれたアンサー・ソングと言ってもよいだろう。ヒップホップへの愛やプライドのように変わらないモノや変えたくない事はあるだろうが、無意味に固執することはない。要は何が一番大事かということで、それはこのご時世だからこそ歌うことがあるんだ、という思いであろう。同年5月に発売された4枚目のアルバムに向けて、まずそれを提示したのだと解釈するには十分なトラックである。

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